年齢を重ねた女性に訪れる更年期は、身体的にも精神的にもさまざまな変化や不調が現れやすい時期です。そのひとつの症状として不眠に悩まされる方は多く、眠れないことでより辛い状況に陥りやすくなってしまいます。今回は、更年期の不眠という悩みにスポットを当て、どのような対処法があるのか詳しくご紹介します。
1.更年期とはどんな時期?改めておさらい
更年期とは、閉経前後の10年ほどの時期を指します。50歳くらいで閉経する人が多く、45歳から55歳くらいの時期が更年期と考えられています。
この10年くらいの時期に卵巣の機能が低下し、女性ホルモンの一種である「エストロゲン」の分泌が急激に減少します。そして、閉経後はこの「エストロゲン」がほぼ分泌されなくなります。
更年期には精神的にも身体的にもさまざまな症状が現れますが、その症状の有無や程度には個人差があります。
更年期の症状として代表的なものにホットフラッシュやめまい、鬱、イライラ、肩こり、不眠などがありますが、そのうち日常生活に支障をきたすほどの深刻な症状は更年期障害と呼ばれています。
2.更年期に不眠に悩まされるのはなぜ?
更年期に不眠に悩まされるのはなぜでしょうか。いくつかの要因が考えられます。
まず1つ目は、更年期には前述の通り女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が急激に減少することが関係しています。
エストロゲンが減少すると脳はもっとエストロゲンを出すよう卵巣に指令を送りますが、卵巣機能が低下しているためエストロゲンを出すことはできません。そうすると脳が混乱するなどして自律神経が乱れ、不眠などさまざまな不調を引き起こすことになります。
2つ目は、女性ホルモンの一種である血中のプロゲステロンやその代謝物の濃度が低下することが要因と考えられています。というのもこれらには催眠作用があることがわかっているからです。
3つ目は、更年期にはさまざまな心身の不調があり、そういったことが不安に感じられたりストレスとなったりして不眠を引き起こすとも考えられます。
このように更年期の不眠といってもさまざまな要因が考えられ、いくつかの要因が複雑に絡み合っている場合もあります。
3.4種類ある不眠タイプ、あなたが当てはまるのはどのタイプ?
不眠といっても大きく4つのタイプに分類することができます。まずは自分がどのタイプの該当するのか知ることが大切です。
入眠障害
入眠障害とは、就寝して入眠するまで時間がかかり寝付きが悪くなるというものです。ベッドに入って寝付けずに1時間ほど経過してしまう人などが該当します。入眠障害に該当する人は、生活習慣全般を見直しつつ、特に夜の過ごしを改善してみましょう。
中途覚醒とは、入眠してから翌朝起床時刻を迎えるまでに何度も目が覚めてしまうというものです。更年期には夜間頻尿も伴い、中途覚醒に繋がるケースもあります。アルコールの摂取を控えたり、カフェインとの付き合い方を見直したりするのもひとつです。
熟眠障害
睡眠の時間は十分にとれているのにしっかりと眠れた感覚が得られないというものです。睡眠時間と照らし合わせ体調を考えてみても疲れがとれていない気がするといった症状がみられます。睡眠時間ではなく、睡眠の質を高める工夫が必要と言えます。
早朝覚醒
通常の起床時間より2時間以上も早く目が覚めて再び入眠することができないというものです。もっと眠りたいという感覚は強く残り、辛い目覚めとなる傾向にあります。睡眠の質を高める工夫をしたり、午後に30分程度の仮眠をとったりするのもおすすめです。
4つのタイプのうち必ずしも該当するのがひとつとは限りません。複数のタイプに該当する場合もあるので、それを考慮し、自分がどのタイプに該当するのか見極めましょう。
4.今すぐに始めたい不眠への対処法
今すぐに始めたいのは、自律神経を整えるようなケアとストレスを緩和するケア、そして、上記の不眠タイプに合った対処法です。それらを複合して生活全般を見直すことが大切です。以下、詳しくご紹介していきましょう。
できるだけ決まった時間に寝起きし、食事を摂るなど規則正しい生活を送ることが大切です。
早く起きると時間に余裕ができ、心にもゆとりが生まれます。心にゆとりが生まれると、自律神経を安定させる効果も期待できます。
また、朝日を浴びることは自律神経を整える体内時計をリセットさせる効果が期待できます。朝起きたらすぐにカーテンを開けて朝日を浴びましょう。
朝日を浴びる時間は安定や癒しの物質ともいわれているセロトニンの分泌を意識し、30分程度必要です。そのため朝の散歩を日課にするのもひとつです。
私たちは寝ている間にコップ1杯分ほどの汗をかくといわれています。朝起きてうがいや歯磨きなどを済ませたら、コップ1杯の水を飲みましょう。朝起きてコップ1杯の水を飲むことは自律神経を整えるためにも効果的だといわれているので、ぜひ習慣にしましょう。
忙しい朝は朝食をつい抜いてしまう人もいるかもしれませんが、自律神経を安定させるためには朝食をしっかりと摂ることが重要です。
朝食で特に摂りたいのが、乳製品やナッツ類などに含まれるトリプトファンや玄米、豚肉、青魚などに含まれるビタミンB6です。
どちらも含んでいる食品はバナナや豆腐、納豆などで、これらの食品をよく噛んで食べることでセロトニンの分泌を促す効果が期待できます。
適度な運動を行う
自律神経を整えるためには適度な運動を行うことが大切です。とはいえハードな運動は交感神経が優位になるため、ウォーキングやヨガ、太極拳などがおすすめです。
カフェインの摂取は15時まで量もセーブする
カフェインを遅くまで摂取するとスムーズに就寝できなかったり、睡眠の質が低下したりします。そのためカフェインの摂取は遅くても15時くらいまでにし、その量も多くて3杯までに留めることをおすすめします。
就寝の90分程度前にぬるめのお湯に15分程度浸かる
自律神経を整えるためには夜の過ごし方がとても重要です。就寝の90分程度前に39〜40度のぬるめのお湯に15分程度浸かりましょう。そうすることで副交感神経が優位になり、安眠効果が期待できます。
スマホやPCなどから発せられるブルーライトは安眠の妨げに。そのため眠る間際までスマホを使用するのは今すぐにやめたいNG習慣です。遅くても就寝の1時間前にはスマホやPCなどの使用は控え、照明もできれば19時くらいから少し落としてリラックスできる空間づくりを心がけましょう。
このほか、気分転換できるような趣味を持つ、アロマを利用する、睡眠サプリなどを導入するといった方法を柔軟に取り入れるのもおすすめです。
特にアロマで取り入れたい精油は、ラベンダーです。ラベンダーには催眠・安眠作用や自律神経のバランスを整える作用、緊張を和らげる作用などがあるからです。
芳香浴やキャリアオイルに混ぜてマッサージに使用するなど自分が取り入れやすい方法でぜひお試しください。
いかがでしたでしょうか。今回は、更年期の不眠という悩みにスポットを当て、どのような対処法があるのかご紹介しました。ぜひ参考にしていただき、更年期の辛い不眠にアプローチしてみてください。
ライター:遠藤幸子
美容ライター、エイジング美容研究家